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​建築の黙示録

 建築は任期を終えて死に逝く際、無残にも重機が入れられ破壊され、何もなかったかのように更地になり新たな物が計画される。私はそのような死にゆく光景に疑問を抱いている。現代において建築はいかに長く大切に使うかが主題となっており、建築は風化に耐えるように設計される、時間の進行を停止させることが現代の設計とも言える。また時間が成す建築は、建築をつくっている側にとってはあってほしくないものであるという見解である。なぜ風化を避けるように設計行うのか。前提に私は風化をポジティブにとらえこの計画を始める。風化の先には廃墟が待っている。それは人間が人間のために自然を制して作った建築が自然へと回帰していき、ある種の土着的な建築となる。人の手を離れた建築はゆっくりと時間を刻み様々な廃墟の美学を生み出す。本計画では廃墟の美学を多方面から紐解き、それを現代の建築に落とし込むことで、その建築に新たな価値や物語を生むことができるのではないか。

廃墟の美学を用いて、『建築未満』、『建築以下』、『建築』の3つの建築の提案をする。

廃墟のリサーチ

​「建築未満」の建築 -展望台- 

廃墟における「生の生成・流転・消滅」の体現

手法として、建築に時間を映しこむ行為ともいえる、コンクリートの打設に注目した。コンクリートはある形状を記憶するだけでなく、型枠の素材を変えることで、形状だけでなく質感、空気、型枠のは破片、様々なものが残る。それは予測不可能で唯一無二なものとなり、様々な物語を生み出す。島の空気をたっぷりと吸い込んだ、建築は3本の柱と1枚のスラブで構築される

「建築以下」の建築 -休憩所-

廃墟における「人工物が自然物として感受される」の体現

廃墟は建物が欠損し、そこに草木が生え、その土地へと帰化していく。このフローを逆算すると元ある草木から欠損(開口)を決定する。それはその土地の自然と建築が同化した廃墟のように土着的な建築となる。

「建築」の建築 ‐小さな公民館‐

廃墟における「人工物が風化によって美を増す」の体現

普通なら廃棄、解体されてしまうであろう、廃屋や瓦礫を建築の構成要素とする。それらは町の歴史そのものである。
数年後、老朽化が訪れたとき建築が解体され、新たな物語が生まれる。

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​「建築未満」の建築 

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​「建築i以下」の建築 

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​「建築i」の建築 

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この3つの建築は一貫して時間軸が重要な働きをする
それは時間と共に建築の表情、空間が変わり続け、
あるものは自然に、あるものは違う形に変化する。

私はこのプロジェクトで廃墟を作りたいわけでなく
廃墟の美学を思考し、廃墟になること、建築が死ぬことを想定し
建築のその後を思考しデザインした。

これから未来、人口減少、少子高齢化社会、空き家問題など
建築が今よりもっと使われない時代が来てしまうかもしれない、
そんなとき我々建築家は何ができるのか、何を考えるべきなのか、
このプロジェクトはその一端を担っていると考える。

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